第3回 「舞台裏」を自ら伝えよう

 2020年、令和2年が始まりました。今夏には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。


■「舞台裏」に触れることで、ファンは生まれる

 正月恒例の箱根駅伝では、青山学院大学が見事、大会新記録で王者に返り咲きました。今年も大勢の観客で沿道は賑わいました。本番のレース報道だけでは、こんなに多くの熱烈な駅伝ファンは生まれなかったし、定着しなかったでしょう。

 なぜ、ここまで根強い人気があるのか。そこには「舞台裏」を報道し続ける、メディアの力が大きく影響していることは間違いありません。

 定番となった感の強い、各駅伝チームの本番に臨む「舞台裏」、大会終了後には優勝校をはじめ、さまざまなドラマの「舞台裏」が毎年繰り返し報道されます。今年も例年どおりでした。今年の舞台裏の一部は、当ニュースルームの「BackStage News」(1月6日付け)コーナーでも紹介したとおりです。


 長年、このルーティーンのような報道を積み重ねてきたことが、熱心な大勢のファン誕生に貢献したことは疑う余地がありません。「舞台裏」に触れることで、感動が増幅し、ファンは生まれるのです。


 2019年に目を向けてみると、秋以降はラグビー日本代表の報道で一色といっていい状態でした。W杯で初めてベスト8に進出したからです。

 4年前のW杯でも盛り上がりをみせました。ただ、その勢いは長く続かず、年月の経過とともに徐々に陰りがみえ、大会前にはそれほど注目されていなかったように感じていたのは、私だけではないでしょう。

 しかし、一戦一戦、勝利するたびに、報道も勢いを増し、選手たちの舞台裏が画面に何度も映し出されました。年末年始でもその勢いは衰えを感じさせませんでした。「にわかファン」が流行語となりましたが、これから、彼らが本物の「ファン」として定着するかどうか、注目したいと思います。


■「舞台裏」を自ら伝える

 2019年の4月からTBSで『BACKSTAGE』(毎週日曜23時30分/30分番組)という番組が始まりました。何と番組名が「舞台裏」です。サブタイトルは、「溢れ出す仕事愛」。扱っているのは仕事、企業モノです。

 直前に放映されている番組は、かの有名な『情熱大陸』(毎週日曜23時00分/30分番組)です。人気番組の『情熱大陸』は、さまざまな個人に光を当てています。まさしく「舞台裏」に密着した番組です。NHKの『プロジェクトX』や『プロフェッショナル〜仕事の流儀』も同様です。


 前述した駅伝やラグビーの報道も、これらの番組も、枠、時間帯は限られています。ごく一部の影響が大きい、有名で目を見張る実績や成果を上げていることだけが選ばれ、報道されます。この限られた、わずかな枠で取り上げられることは至難の技です。


 ここで立ち止まって考えてほしいことがあります。当ニュースルームのカテゴリー「BackStage News」を見ても分かるとおり、メディアは「舞台裏」が「大好き」です。「舞台裏」を報道したがります。では、「舞台裏」はメディアの専売特許なのでしょうか。

 決して、そうではありません。インターネット網があまねく広がり、社会の重要なインフラになった現在、自ら「舞台裏」を伝えられるではありませんか。インターネットの黎明期、「自ら放送局を持てる」ことに興奮したことを覚えています。

 企業や団体など、ありとあらゆる組織は、自ら「舞台裏」を明かし、インターネットを通して発信することで、ファンを獲得できるのです。

 むしろ問題なのは、「舞台裏」を晒すことができるのか、ということです。ブラック企業のように明かしたくない、晒したくない事実があれば、表面や外面だけをきれいに装い、必死に「舞台裏」を隠すでしょう。組織の姿勢や組織文化が問われるのです。


 ラグビー人気が定着し、より広がるかどうかは報道だけに頼らずに、協会・チーム・個人、それぞれが自ら「舞台裏」を伝え続けられるかどうかにかかっていると、私は見ています。


 半年後に始まるオリンピック・パラリンピックでは、多くのドラマが生まれ、日本全土が感動や興奮で沸き立つに違いありません。アスリートの活躍によって、マイナーといわれる競技も脚光を浴び、「にわかファン」が増えることでしょう。

 しかし、一時の熱狂はやがて冷め、時間の経過とともに元の状態に戻ってしまいます。そうならないためには、関心を持ってくれた「にわかファン」の一人一人を大切に思い、自ら「舞台裏」を丁寧に地道に伝え続けられるかどうかにかかっています。


記事の画像をダウンロード 記事の動画を観る
前の記事 次の記事